2011年1月17日月曜日

孤宿の人

先週、宮部みゆきの「理由」を読んだ後に、妻のチカコから「宮部みゆきなら『孤宿の人』がええよ」と薦められ、言われるままに市立図書館で借りて読み、チカコの書評力?を再認識させられました。


私は、読んだ本の作者名や題名をすぐに忘れてしまいます。人に尋ねられて「確か、読んだことがあるような、ないような…」「ああ、そういえば読んだことがあったかな?」程度。大切にしているアコーディオンの楽譜でさえ、すでに購入していたことを忘れて、「いい本見つけた!!」と買って帰り、家で同じ本を見つけてガックリ…という経験が(CDでも)あるほどです。


その点、チカコはまったく違って、作者名や題名、内容などもスラスラとまではいきませんが、私が感心させられる程度には覚えています。私とは比べようもないぐらいたくさんの小説やエッセイを読んできたにもかかわらず…。


「孤宿の人」は「上」「下」それぞれ400ページを超える長編ですが、まったく苦になることなく最後まで読み終えることができました。「積ん読」には決して陥らない小説です。


幕藩体制に崩壊の兆しが見えだした(象徴が大塩平八郎の乱)第11代将軍家斉の時代。讃岐の丸亀藩をモデルとした丸海藩を舞台とし、早くに母親を亡くした少女"ほう"が主人公。


老夫婦に預けられ、江戸で過酷な日々を送り、丸海藩の藩医「井上家」に預けられることとなります。「阿呆」の「呆」とさげすまれてきた"ほう"が、何人もの登場人物に温かく見守られ、「呆」から「方」へ、そして「宝」へと成長していきます。

"ほう"のまわりで何人もの人たちが「死」を迎えていくのですが、無垢で必死に生きようとする"ほう"の姿に胸を打たれる時代小説です。

「理由」と比べること自体おかしいのですが、「理由」にはなかった、「ひきつけられ、同化させられる」私がそこにいました。小説なのに"ほう"のその後の成長を願わずにはいられないほど…。

まだお読みでない方、だまされたとは思わせません。ぜひご一読あれ。
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