2011年10月4日火曜日

不知火海

内田康夫の「不知火海」(講談社)を読みました。

今回の作品では、いつもの「浅見光彦」シリーズと少し違った印象を受けました。

まず、光彦がなかなか登場しないのです。第2章の途中からの登場。また、「犯罪」が絡むことはもちろんですが、光彦が直接事件に絡むことのない展開になっています。

物語の簡単なあらすじは…代官山のアパートに隠れるように住んでいる米村が、隣に住む雑誌社の坂本に箱を預けたままモデルの千恵とともに行方不明に。坂本は箱の中味がドクロだと知り浅見に相談。浅見は箱の底の砂を兄(刑事局長)を通じて鑑定依頼し、それが放射性物質だと判明。これ以上書くとこれから読もうとする方の楽しみを奪うことになりますので…。

米村の父親は三池炭鉱の大爆発事故で死亡していたこと、ドクロの奥歯から石炭が見つかったこと、モナザイト(放射性物質)は輸入禁止になっていること、これら「事件」の手がかりになりそうなことを元に、光彦は不知火海(有明海)に面した各地を訪れ、米村の過去を調べていきます。

主に「三池炭鉱」の歴史を光彦は調べるのですが、読んでいて「吉田親家77コンサート」のことを思い出していました。間寛平のように「ナーゼジャ、ドーシテジャ」とツッコミをいれられそうですが、三池炭鉱といえば荒木栄。荒木栄といっても私より下の年代の方はほとんどご存じないと思います。

荒木栄は三池炭鉱社宅に生まれ、大牟田センター合唱団を結成し、数々の歌を作ってきたひとで、「77コンサート」で女声合唱団が歌った「星よおまえは」は彼の作詞。私の大好きな歌です。その他にも「仲間のうた」「花をおくろう」などの祝賀歌、私が教師になってからも合唱したことのある「子供を守る歌」、そして三池炭鉱の闘争をうたった「地底の歌」…、ご存知の方も多いと思います。

あらぬ方向にいきかけましたが、元に戻します。この「不知火海」は荒木栄を思い出させてくれるほど「三池炭鉱」の歴史を詳しく(といっても、量としては少ないのですが)調べた上で書かれています。結局、米村自身がすべてのことを解明して物語は終わります。光彦が重要な役割を果たしてはいるのですが…。

作者は、あえて水俣病などの話題には一切触れず、三池炭鉱の歴史や「不知火」に絞ってこの作品を書いています。「荒木栄」を知る方には特にお薦めします。
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