選者の一人、島田雅彦氏の「選評」には次のように書かれています(抜粋)。
「きことわ」は芥川賞のもうひとつのラインナップである技巧派、新機軸の代表例だ。(略)彼女は時間の処理の技術に長けているし(略)、文章表現は五官の全てによく連動してもいる。
「苦役列車」は古い器を磨き、そこに悪酔いする酒を注いだような作品だ。(略)社会や政治を呪うことさえできず、何事も身近な他人のせいにするその駄目っぷりだが、随所に自己戯画化が施してあり、笑える。
8歳の貴子(きこ)と15歳の永遠子(とわこ)が共に過ごした少女時代の1日と25年後に再開した日を描いた「きことわ」。表現は驚くほど「技巧的」なのですが、書かれている内容があまりにも薄っぺらくて満足感を味わうことはできませんでした。
「時間の処理」についても技術的なうまさは感じますが、25年という長い時間を二人がどう生き、周りの「大人」たちがどう生きてきたのかがほとんど描かれておらず、共感する箇所がないに等しいのです。小学生ならきっとこう言うでしょう、「それがどうしたん…」と。
対称的にインパクトのキツい「苦役列車」。自堕落な生活をおくる19歳の青年が主人公。筆者自身の実体験が9割という、まさに「私小説」。
父親が「性犯罪」を犯し、家庭崩壊。中学卒業後、単身東京に出て日雇い労働。それも金が尽きたときだけ…。そんな主人公がやっと「友」を求め、連日働くようになるのですが、その友人との別れを機に元の生活に。
19歳になった青年が、常に周囲との軋轢を起こしながらも、唯一の「友」と繋がる努力をする場面だけは「共感」できるのですが、その他は「人」として共感できないのです。食欲と性欲だけが彼の支え。まるで獣そのもの。思春期まっただ中の少女ならきっとこう言うでしょう、「男って不潔ヤワ…」と。
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「月刊文芸春秋」は、東京の姉がほぼ毎月のように購入しています。バックナンバーをお土産がわりに里帰りの時に持って帰ってくれます。実母、私と回し読みになります。
返信削除でも、ここのところあんまり読めていません。
今、私が読んでいるのは「貴志康一 永遠の青年音楽家」(毛利眞人 国書刊行会)です。以前より、貴志康一について詳しく知りたい、という思いがありました。
(この人の名前を知ったのは、20余年前のFM大阪のクラシック系番組「デーヤンの音楽横丁」←これに今回吉田先生を取材された吉川Pがかかわっていはりました。出演者兼作り手といったところでしょうか。)
貴志サウンドは邦人作家の中でもっとも好きな音なのです。武満徹も好きですが。
くま女房さんへ
返信削除よくそんな昔の音楽家をご存知ですね。
武満徹は私でも知っているほど有名なんですが…。
文藝春秋を購読されているお姉さんってスゴイ読書家なんですね。私は現職時に教育関係の雑誌を必要にせまられて3種類、定期購読していましたが、仕事を辞めた今、定期購読誌はゼロです。
昔はやや難解な哲学書等を愛読してましたが、(ホンマか?の突っ込みアリ。スンマセン、真赤なウソでした。)今は定期購読書といえば、「めばえ」と「幼稚園」といったところカナ。
返信削除実は4歳の孫娘が、家がスグ近くのため、しょっちゅう遊びに来るので毎月買ってあげているのです。
4歳ですが、5・6・7歳用対象の本を読んだりしています。私も73歳で、ちょっと対象からはずれているかもしれませんが、少し背伸び?して、一緒に愛読しております。若さを(と同時に幼さも)保てること、請け合いです。
ハズカシクて名を名乗れぬ男
こどものころは、「こどものとも」(福音館)が毎月手元に
返信削除届く状態でした。実母がK式の教室を営むようになって、しばらくして、「幼児のクラス」がはじまりました。
数年にわたり、「こどものとも」をハハは副教材として
申し込んでいました。
こどもの本から離れる年になって、こどもの本と再会できたのはとても楽しかったです。
また、「童謡」のプリントなどもハハと一緒にながめたり
ピアノで弾いたりしていました。
MR.BONさんへ
返信削除コメント、いつもありがとうございます。
私も早く「おじいちゃん」になりたいです。
プリンのおばちゃんさんへ
返信削除私は仕事柄、小学生向けのものは目にする機会が多くありました。ピアノの子ども向けの定期刊行誌もあり驚いていました。
アコーディオンには、もちろんそんなものナイ!