2011年5月30日月曜日

オブリビオン~忘却

大石直紀の「オブリビオン~忘却」(角川書店)を読みました。
この小説の題「オブリビオン」は アルゼンチンのタンゴの革命児といわれたアストル・ピアソラが1980年代半ばに流行らせた曲です。アコーディオンでもよく演奏される曲です。

小説の中には「淡き光に」「ラ・クンパルシータ」「アディオス・ノニーノ」「リベルタンゴ」…有名なタンゴの名曲が出てきます。バンドネオンという楽器が、父・息子・孫娘と三代にわたって弾き継がれる〈家族〉の歴史が描かれています。

主人公の(後にプロのバンドネオン奏者となる)梓は、6歳までの記憶がありません。実の父、信彦が母を殺し?、逃亡生活の末、生まれ育ったアルゼンチンにたどり着きます。信彦は昔、自分の父親を殺し、身代わりとなって服役した母親と別れて日本に逃れてきていたのですが、すでに出所していたその母親に再会します。


複雑な人間関係と殺人が絡むこの小説に「オブリビオン(忘却)」という題がとてもふさわしく感じました。あの哀愁漂うメロディーもこの小説にピッタリです。

とても読みやすい小説で、一気に展開を楽しみながら読むことのできるのですが、内容に薄っぺらさがあることは否めません。信彦のとった行動(読んでのお楽しみ)の背景がきちんと描かれておらずイライラ感をおぼえてしまいますし、人間性の否定的な側面を強調しすぎており現実感に乏しい小説になってしまっています。

でも、梓がバンドネオン奏者として演奏するラストシーンのおかげで、とても気持ちのよい読後感を味わうことができました。

私には難しすぎる「オブリビオン」をアコーディオンで弾きたい気持ちにさせられてしまいました。昨日のビバアコで買った曲集に偶然この曲が載っていました。挑戦しようか、止めようか、迷っています。
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