2011年5月6日金曜日

藩医 宮坂涼庵

和田はつ子の「藩医 宮坂涼庵」(新日本出版社)を読みました。

城代家老である遠藤源右衛門によって牛耳られる秋川藩。その城代家老の企みをあばく中心人物として藩医 宮坂涼庵が飢餓や病気に苦しむ人々の命を守るため、我が身を削りながら難問にあたっていきます。

「お松の方」「救荒草木図」「百合根長者」「乙女椿」「彼岸花」「塩の花」「桔梗ヶ原」の7つの章から成る時代小説。

実は、主人公は藩医 宮坂涼庵ではなく、元の城代家老山村次郎助の娘であり、庄屋の妻となりそして寡婦となったゆみえ。宮坂涼庵から乞われ、その右腕となって活躍する姿を描いた作品です。

作品には当時の農民や下級武士たちの困窮する生活が描かれ、一方で私腹を肥やす一部の武士、商人の企みが次々に…。

当時の藩の実状にも触れています。家臣全員への禄、参勤交代の費用、江戸屋敷維持の費用、幕府への盆暮れの挨拶、治水工事、飢饉対策…。宮坂涼庵は無償で村人などの治療にあたりながら、一方で飢饉対策として「救荒草木図」(食することのできる草木や毒のある草木などを絵で説明したもの)作りをゆみえに託します。ゆみえは母から教わった知識を元に、草木図を描きながら、治療にもあたっていきます。

最後の非常食であるワラの調理法や毒のある彼岸花の球根の毒抜き法、よいとされる植物も食べ過ぎると毒になること、薬は使い方次第で毒となること…こういうこともゆみえらは人々に教えていくのです。

私腹を肥やす城代家老の悪事を江戸の藩主に訴えるため決死の覚悟で秋川藩を発ち、一部の問題は解決へと導かれます。しかし、肝心の城代家老や商人の問題は不明のまま…。

調べてみると、小学館文庫より続編である「藩医 宮坂涼庵(続)」が出版されていました。機会があればぜひ読みたいと思わせてくれた小説でした。

ランキングに参加しています。応援クリックをお願いします。
ブログランキング・にほんブログ村へ

0 件のコメント:

コメントを投稿