2011年4月28日木曜日

コイン・トス

2週間前のこのブログでボロカスに書いてしまった幸田真音の作品「あなたの余命教えます」。もう彼女の作品は読まないつもりでしたが、もしかしたら、と期待させられる本を見つけて読みました。「コイン・トス」(講談社)です。

9.11テロと幸田真音が得意とする金融界に生きた人を描いた作品。期待を持って読み始めました。

「小説現代」に連載(といっても2001年11月号から2004年2月号まで、かなりの間隔があります)され、「コイン・トス」「グラウンド・ゼロ」「ふたつの顔」「冴子」「迷い道」「十一番街の女」の6章から成っています。

主人公の篠山孝男が信託銀行から証券会社に転職し、そこで北原冴子と運命的な出会いを果たします。その冴子が画商になる夢を持ってニューヨークへ。篠山がニューヨーク出張した折に冴子と再会し、妻子ある身ながら恋に落ちていきます…。

その後、警備会社のガードマンに再転職した主人公が東京で冴子に再会。そして、冴子は再びニューヨークへ。そこで、あの世界貿易センタービルに旅客機が突っ込み…、たまたまそのときに冴子はそのビルに所用で訪れており、惨劇のさなかに篠山へ電話をかけてきます。

結局、冴子は行方不明のまま。この辺り(第2章)までは読み応えのある内容だったのですが、その後がいただけません。特に第3章「ふたつの顔」と第4章「冴子」は、小説の中から消去した方がスッキリします。物語の進展にほとんど影響しない、いや、かえって質を下げる役割しか果たしていないとしか思えません。

そして、意外な終わり方。こういう結末になるなら、少し物語の構成をかえるべきです。国際金融市場の現場で一時期を過ごし、WTCに深く関わってきた作者ならではの小説を期待していたのですが…「幸田真音」だからこそ描けた、という内容がありません。

読みやすく、誠実な書きっぷりに好感を持てる作家ですし、決して寂聴のようなエゲツナイ表現がないので安心して読める作家でもあります。でも、満足感を与えてはくれませんでした。
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