2011年4月8日金曜日

内部告発者

滝沢隆一郎の「内部告発者」(ダイヤモンド社)を読みました。

小説の表題の重みに耐えられない内容の小説でした。表紙に赤字で「第1回ダイヤモンド経済小説大賞受賞作」と書いてあることがこの本を借りた唯一の理由だったのですが、見事に裏切られました。


ある経済誌が「渋谷火災」の不正融資について、内部資料をもとに暴露記事を書きます。前副社長の仲田希一が内部告発者であるとして、2億円もの損害賠償請求をされます。その仲田は、若手弁護士の羽根田とともに裁判で争っていきます。

退職した仲田にとって「裁判」は金銭的にも精神的にも重い負担となり、自殺を試みかけたり…。最後には、意外な人物が(といっても、読み進めているうちにその人物に絞られてしまうのですが)内部告発者であることがわかります。

話の展開自体におもしろさがあるでもなし、「内部告発」の動機や社会的制裁を受けるべき背景の描写に力を入れているわけでもなし…受賞の理由がわからない…そんな作品でした。


この小説とは直接関係はありませんが、「内部告発」といえば、報道されたものだけでも数え切れないぐらい多くのものが過去に存在します。そこには小説以上の壮絶なドラマがあったことでしょう。

今問題になっている原発関連でも、過去に何回も内部告発によって問題になったことがあります。
◆東京電力福島第一原発の原子炉に送る水の流量を測定する計器の試験データが改ざんされていたこと
◆東京電力の原発損傷隠し・虚偽記載問題
◆中部電力・浜岡原発1号機(静岡県浜岡町)で続発した配管破断、原子炉水漏れ事故隠し…

食品関連でも
◆北海道の土産物として有名だったお菓子「白い恋人」の賞味期限の改ざん・偽装
◆「三笠フーズ」(大阪市北区)の汚染米転売問題
◆食肉業界大手のハンナングループ企業が、BSE(牛海綿状脳症)の検査済み証明書を大量にコピーするなどして、牛肉の産地偽装をおこなっていたこと
◆牛肉偽装をしたミート・ホープ社事件
◆毒性の強い発がん性のカビや農薬に汚染された外国産米が食用として転売されていた問題…


国、役所関係では
◆建設工事をめぐる官製談合
◆警察の組織的な裏金づくり
◆国民の税金が「国会対策費」の名で一着五十万円、百万円もの背広代に消えていた官房機密費
◆「従軍慰安婦」制度の責任追及をテーマに、NHKが放送したETVシリーズ「戦争をどう裁くか」の第2回「裁かれた戦時性暴力」の内容が放送直前に大幅に変更された問題…


民間でも
◆三井住友銀行が融資先の中小企業などに対し、融資継続の条件にデリバティブ(金融派生商品)を購入させていた問題
◆第一生命の保険金不払い隠し
◆商工ローン最大手SFCGの資産隠し
◆三菱自動車の欠陥隠しとクレーム・リコール隠し…

どれも「内部告発」で明らかになったもの。闇の中に閉じ込められたままのものの方が圧倒的多数。本の感想よりも「内部告発」紹介の方が字数が多くなってしまいました…スミマセン…。
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