2011年3月10日木曜日

冬のはなびら

伊集院静の「冬のはなびら」(文藝春秋)を読みました。

「雨あがり」「夏草」「遅い春」「陽だまりの木」「春泥」「冬のはなびら」、この六つの短編集です。


若い経師職人が、彼をあたたかく見守る先輩職人や仲間のおかげで成長していく姿を描く「雨あがり」。

妻を亡くした主人公が、若い頃から続いた野球人生を振り返り、季節の移り変わりに目がいくようになった姿を描く「夏草」。

関わる全ての人々から尊敬され、憧れられる消防員が「大切な状況に遭遇した時に…躊躇うことがないように生きたい」ゆえに独身を通し、その彼が15も年下の女性と結ばれるまでを描いた「遅い春」。

定年退職をむかえた主人公が、亡くなった妻との思い出を胸に、丘の上にある「木」を訪れる心境を描く「陽だまりの木」。

夫に先立たれた女性が、自分の生いたちを見つめ、句会で知り合った男性と共に生きていくと決意する過程を描く「春泥」。

無二の親友が亡くなり、その無念さを理解する男が「仕事」を受け継ぎ、教会を何年もかかって手作りで建てていく「冬のはなびら」。


どの作品も、人の温かさに満ちあふれたもの。本を読む時間がない、という方には特にお薦めの本です。どの短編も短いながら、深いぬくもりを長く心に留めてくれる素敵な作品です。
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