天童荒太の「あふれた愛」(集英社文庫)を読みました。
前回、図書館に借りにいくと「2月14日から28日まで閉館」のため、十冊借りることができました。その本を読み終えてしまい、例によってチカコの残している本を本棚から漁り、見つけ出した本。
「とりあえず、愛」、「うつろな恋人」、「やすらぎの香り」、「喪われゆく君に」、この四つの短編が収められています。
「とりあえず、愛」…身勝手な行い、考えで妻を傷つけていき、耐えきれなくなった妻が精神を病んで心療内科に…
「うつろな恋人」…不安神経症でストレス・ケア・センターに入院している彰二と、彼との関係から再び精神を病み再入院する智子…
「やすらぎの香り」…精神科に入院していた二人が、周りの人々に温かく見守られ、流産という悲劇を乗り越えていく…
「喪われゆく君に」…コンビニに勤める浩之の目の前で突然死した男性の妻に対する思いや行動から、恋人と別れる危機を迎える…
この作品をよく言えば、すれ違い、傷つきながら、社会に順応できないながらも、周りからの温かい手、温かいまなざし、困難を乗り越えるのにそっと後押しをしてくれる人たちによって、新たな人生へ一歩踏み出すさまを描く、優しさあふれる作品です。
しかし、この作品には「社会背景」が描かれていません。天童ファンには申し訳ないのですが、私のような年代のものにとっては、惹きつけられたりする場面があまり登場しないのです。でも、若い人たちには、これからの人生を考えさせてくれる作品になるかもしれません。
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