2011年2月7日月曜日

書物迷宮

「予約」しておいた本がようやく貸し出し可能に。かなり待たされましたので、人気のある本であることはまちがいなさそうです。連絡を受けて昨日、図書館に行ってきました。

だいぶ以前に、電子辞書が欠かせなかったと「書物狩人」のことを紹介しましたが、そのシリーズの二冊目、赤城毅の「書物迷宮」(講談社)。


作者が「あとがき」で、こう書いています。「例によって、九割まで事実を用いて組み立てた上に、一割の虚構を混ぜ込んである。かかる企みが功を奏し、一瞬だけでも、書痴たちをして迷宮の住人たらしめることができれば、著者としては、おおいに満足だ。」


「書物迷宮」は4つの中編(短編?)からなっています。スペイン内戦にたおれたロルカの詩集をあつかう「書庫に入りきらぬ本」、日本の中国侵略の過程で、北京原人の化石を運んだとされる満鉄の臨時時刻表をあつかう「長い長い眠り」、ユーゴスラヴィアからの独立運動に必要とされた、ある公爵家の書物をあつかう「愛された娘」、ナチス・ドイツが細菌兵器研究で遺したとされる、ペスト菌培養や散布の方法が書かれた本をあつかう「冷やしすぎた秘密」。


一作目と同様、巻末に五十冊近くもの参考文献を掲げ、史実を綿密に調べた作者の知見には感心させられます。作者が「あとがき」でいう目的は、ほぼ達せられています。ただ、人物の内面を描くことへの興味が作者にはあまりないことが悔やまれます。

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