2011年10月1日土曜日

凶刃 用心棒日月抄

藤沢周平の「凶刃 用心棒日月抄」(新潮社)を読みました。

この「凶刃」は、前3作(「用心棒日月抄」「孤剣」「刺客」)が短篇連作集として執筆されたのとは違って、一つの長篇小説として執筆された作品です。

藤沢作品にはハズレがありません。このブログで「海坂藩」シリーズや「静かな木」が人間性豊かで魅力的な小説だったことをご紹介したことがありました。今回はシリーズ最終作の長編でしたが、とても読みやすく、そして楽しめる作品でした。

このシリーズはその人気ゆえか、NHKや各民放で何度かドラマ化されたそうですが、ドラマを見ない私は全く知りませんでした。

主人公の青江又八郎は、病気療養のため江戸屋敷から国に戻ってくる近習頭取と一時的に交代することになります。と同時に、かつて又八郎が関わった藩の秘密組織、嗅足組を解散するために江戸の嗅足組を仕切る佐知への伝令を頼まれ…そちらの役目は密命。

この任務を命じた人物が、又八郎が江戸へ向け出発する直前に殺され…この辺りから藩内の不気味な動き・秘密が明らかになり出し、読むものを冒頭から惹きつけるニクイ書きっぷり。

江戸に着き、16年ぶりに嗅足組を束ねる佐知と再会してからは、幕府の隠密、藩内で姿を見せぬ黒幕、嗅足組の三つ巴の死闘をくぐり抜け、佐知と共に藩の秘密に迫っていくことになります。

これまでに読んだ短篇は下級武士と町人や百姓の生活を人情味あふれるタッチで描き、江戸や藩で暮らす人々の生活が温かい視点で描かれているものが多かったのですが、この作品は少し趣の異なった作品でした。お薦めの時代小説です。
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