2011年9月16日金曜日

上海迷宮

内田康夫の「上海迷宮」(徳間書店)を読みました。

浅見光彦シリーズとしては珍しく、主に海外(上海)を舞台としたミステリー。飛行機嫌いの光彦は、この「飛行機嫌い」を理由に依頼を断るのですが、「フェリー」で行くことができると聞かされてOKを出します。

私が一番始めにこのシリーズと出会ったのが貴賓室の怪人「飛鳥」編でした。浅見光彦が初の海外進出をした作品です。この作品とその続編イタリア幻想曲 貴賓室の怪人IIが他にあるぐらいで、海外それも中国での活躍を描いた珍しい作品。

日本で中国語学校の教師と法廷通訳の仕事をしている曾亦依(ソウイイ)が今回のヒロイン。

上海のホテルで殺された大学教授が父親の知り合いで、その父親の「えん罪」を晴らすことが亦依の依頼。新宿のマンションで殺された中国人女性は亦依の古くからの「友人」。この二つの事件が密接に繋がりあっていることが光彦によって明らかにされていくのですが…。

今までに読んだ光彦シリーズの中では、最もお薦めできない作品でした。言語の違いや風習・文化の違いを乗り越えながら事件の真相を究明していくのですが、その過程に違和感があるのです。日本での殺人事件に関わることを一民間人の光彦に中国の警察や日本領事館が協力する、という設定自体にまず納得できません。

また、ヒロインの無謀とも言える単独行動が彼女の命を危機に陥らせるのですが、その危機を救う場面では「ソンナことアリエヘン」と言いたくなる、「シンジラレナイ!」展開。

とにかく設定に「無理」がありすぎるのです。長編の楽しさは味わうことができましたが…。他の気軽な作品を先に読まれることをおすすめします。
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2 件のコメント:

  1. 作品とは直接関係がないのですが、「上海」。に響いてしまいました。
    先日、奈良アコのIアニ様とご一緒した折に、「とてもかわいがってくださっている利用者さんの十八番が「上海帰りのリル」なんですよ、いずれ一緒にさらってくださいね。と言っていたところでした。
    また、大学時代の友人Kちゃん、と学園前のミュゼットに伺ったとき(7月ですが。)、師匠の旧友I氏が「月光価千金」を一緒に弾いてくださいました。Kちゃんいわく「わあ。。。上海バンスキングの世界。」と言ってくれたことを思い出しました。

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  2. くま女房さんへ

    この小説にもジャズバンドが登場し、事件の重要な鍵を握る人物がその中に…。
    浅見光彦シリーズは「旅情」を感じさせる描写が「売り」なんですが、この「上海迷宮」は例外かもしれません。

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