2011年9月14日水曜日

不死身の落語家

春風亭柳桜の「不死身の落語家」(うなぎ書房)を読みました。

ビュルガー病で「24歳のときに入院して以来、入退院を繰り返し、腹部交感神経を取られ、膵臓と脾臓を取られ、右足を切断し、左足を切断し、心臓冠動脈の不全で緊急入院し、夜中に吐血して病院に運ばれ、まさに満身創痍」の落語家、春風亭柳桜が自身の闘病生活と落語家生活を描いたエッセイです。

2005年にTBSの「報道特集」という番組で取りあげられたそうで、ご存知の方がいらっしゃるかもしれません。私はこの本を読むまで全くその名も知りませんでした。立川談春の「赤めだか」を読み、落語家の書いた本のおもしろさに触れ、「題」に惹かれて借りた次第。

「赤めだか」のような面白さはなく、難病と闘いながら真打ちに昇進していく柳桜の「強さ」に心打たれる「自伝」です。

「私は病人のプロ」と笑い飛ばす柳桜。そんな彼があるインタビューで次のように語っています。
 実は長期的な目標は、なにもありません。ビュルガー病だけじゃなくて、糖尿病や心不全、それにすい臓も悪いから、本当に調子がよくない時は息をしているだけでやっと。そうなると明日のことも考えられないし、明日の朝まで体がもつかな、という状態になることさえあります……。

 ただ、漠然とね、そんな合間を縫いながら「引きこもらずに外へ出て行こうとしている人間だ」という看板は続けたいと思っていますし、障害や難病を抱える人たちにもそのことを伝えたい。引きこもらないコツは、初めはもう、ちょっとした決め事です。「せめてあの喫茶店にだけは毎日行こう」とかね。たまたまそこには可愛いウェイトレスさんがいたりしますけど(笑)。

 落語に関しては、いま自分が持っている噺を腐らせないことが一番大事。芸というのは同じ水準を保つのが難しいんですよ。常に切磋琢磨してないとすぐに落ちていっちゃう。わたしはいまそれを守るだけで精一杯で、新しい噺を持ってきて磨くだけの体力がない。でも、たとえば人情話なんかで、まだまだやってみたい噺はいくつかあります。それは自分の体と相談しながらやっていきたいと思っています。

本の紹介というより、柳桜の紹介のようになってしまいましたね。機会があればぜひ、ご一読を。
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4 件のコメント:

  1. プリンのおばちゃん2011年9月14日 21:08

    柳桜師、壮絶なお立場にありながら、「芸の精進」につとめておられれる様子が伝わる紹介です。
    「赤めだか」のように、「おそらく図書館にありそうな本」
    ではないので、興味はあるものの「出逢えるかどうか」です。
    ところで、キクさま、「米朝ばなし 上方落語地図」という
    本を読まれたこと、ありますか。
    上方落語の舞台となったところの名所紹介のような本です。
    20年以上前に、落語会のロビーでもとめた文庫本(米朝師のサイン入り)が手元にあります。何回も読んだので、かなり「くたくた」になっています。
    ご興味をもたれたら、ぜひ、ご一読を。

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  2. プリンのおばちゃんさんへ

    お心遣いありがとうございます。
    今度図書館に行ったときに、まずは探してみます。

    柳桜の本は田舎(橿原市)の図書館にあった本ですので、おそらくお住まいの市の図書館にもあるはずです。
    どちらかを選べ、と言われたら「赤めだか」です。
    純粋に「楽しめる」からです…

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  3. 落語といえば、先日(12日)の夜NHKのテレビで桂三枝・
    立川談春・春風亭昇太の3人が落語についてのいろいろな苦心や工夫、魅力などを語っていました。また創作する場合に留意することなども交えて、興味あるトークが聞けました。

    もう10年は前になりますか、桂枝雀の全集ビデオを十巻、通販で買い求めました。
    というのも、ワタイも根がまじめで、冗談の一つも言えない方なので、落語でも聞いて勉強せんならんといかんナァ、と思ったワケだす。聞いて笑い転げてもすぐ忘れてしまい、いまだに冗談の一つも言えないままで困ったものダ。
    田舎の中学の同窓会や、毎年1回実施している兄弟旅行でも、大阪のワタイが世話係をした時、繁昌亭の寄席を行程に入れ、楽しんでもらったことがあります。
    ンナわけで結構落語は好きでおます。おかげで人生も落伍者
    になっとりま。

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  4. MR.BONさんへ

    談春の「赤めだか」を読んだ後なので、その番組を見なかったこと、後悔しています。
    BON先生のキッツイ駄洒落は「西アコ」名物。
    来年こそ?、「洗練された」駄洒落を期待します。

    偶然ですが、図書館で枝雀のDVDを借り、聞き始めたところです。枝雀は豊中の実家近くに住み、電車でいっしょになったこともあります(ずいぶん昔のことですが)。歩きながらブツブツ、電車の中でもブツブツ。とにかくすごい人でした。どんな状況でもずっと落語の練習…。惜しい人をなくしました。

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