2011年9月1日木曜日

静かな木

藤沢周平の「静かな木」(新潮社)を読みました。

「岡安家の犬」「静かな木」「偉丈夫」の3つの短篇が収められています。どの作品もまさに、短篇。「偉丈夫」にいたっては、13ページ。この作品は藤沢周平の最晩年の作と言われています。

この「静かな木」が出版されたのは、1998年。藤沢周平が亡くなった1年後に出版されたことになります。「遺作短編集」とも言えるものです。

「岡安家の犬」は、アカという名前の犬を大切に育てている岡安家の当主、岡安甚之丞が道場仲間に誘われて犬鍋を食べることとなります。食べた後に親友で、妹・八寿の許婚である野地金之助に「いま喰ったのは、貴様の家のアカだぞ」と言われ、激怒した甚之丞が金之助に「貴様とのまじわりはこれまで…八寿との縁談もなかったものにする…」。このあと金之助は…(ここからが藤沢周平の温もりが感じられるのですが、紹介はここまで)

「静かな木」は私が一番気に入った作品です。5年前に隠居し、2年後に還暦を迎える布施孫左衛門。福泉寺の欅(あらかた葉を落とし、幹も細かな枝 もすがすがしい裸)を見て、「あのような最期を迎えられればいい」と思っていた孫左衛門が「生きていれば、よいこともある」と変わっていく過程を描いた作品。(果たし合いを覚悟する息子を案じ、結果、藩の不正を暴き…)

「偉丈夫」は、見かけは偉丈夫なのに、「小心者」である男が主人公。

どの作品も人間味あふれた逸品です。このごろ連続していい作品に巡り会え、気分のいいワタクシであります。
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4 件のコメント:

  1. プリンのおばちゃん2011年9月1日 22:17

    藤澤周平、山本周五郎、私も好きな世界です。縁がありとても
    かわいがってくださったおばさま(旧制女学校の「清水谷」OGの方だったので、こどもの先輩にあたります。奇しくも、ご命日がうちの子の誕生日。N女史、あなたの後輩はとても元気に学校に通っていますよ。明日は、文化祭。ミュージックショーをするとのこと、はりきっています。)が、「ラジオ深夜便」の松平
    定知さん朗読の「海鳴り」を毎回とても楽しみにされていました。藤澤氏のお名前を拝見したことにより、N女史との思い出に
    しばし心を寄せられたことに感謝です。

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  2. pikkuです。
    読んで良かったと思える本に出会うと嬉しくなりますねえ。

    反対に損したと思う本もありますよね。

    まあ、この頃の私は片手間で読んでるので軽いのばかりですけどねえ。

    本を我慢して読むことはなくなりました。
    我慢して読んでもいいなあと思える本はないですからねえ。

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  3. プリンおばちゃんさんへ

    私の借りた本を読み終えてしまい、チカコが借りた本の中から一番薄い本を選ぶと、偶然この本でした。
    1時間ぐらいで読め、おまけに内容に満足。得した気分になりました。
    亡くなられた「おばさま」の思い出の作家とは…。長編の「朗読」を聞く楽しみ、分かるような気がします…

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  4. pikkuさんへ

    この本は「我慢」がまったくいらない本でした。もしまだお読みでなかったら、お薦めします。

    長編は、前半で我慢を強いられ、後半で俄然おもしろくなり…というパターンだといいのですが、そうでない本に巡り会うと「時間を返せ」と言いたくなってしまいますね。

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