2011年8月26日金曜日

少年譜

伊集院静の「少年譜」(文藝春秋)を読みました。

かつて「宙ぶらん」だけは、伊集院静の作品にしてはあまりお薦めできないと紹介しましたが、今回の作品は自信を持ってお薦めできます。

「少年譜 笛の音」「古備前」「トンネル」「腕くらべ」「朝顔」「茶の力」「親方と神様」の7つの短篇からなっています。

全ての作品に共通するのは、少年をテーマとしていること。どの「少年」も両親ともいないか、母親だけか…。時系列に従って書かれているものもあれば、老人が過去を振り返って少年時代が明らかになる作品もあるのですが、「少年」に親しいものの「死」が必ず書き込まれています。

全ての少年が一途に生き、困難に直面したときに温かく(ときに厳しく)見守ってくれる頑固?な大人がいるのです。少年がそのときに教えられたことを一生の宝とし、その恩を忘れずにそれぞれの人生を築き、あるものは死を迎え、あるものは…。

私が特に気に入った作品は、表題にもなっている「少年譜 笛の音」と「古備前」。

作者自身があるところで、この作品について次のように語っています。

「子供は国の宝。血がつながっていてもいなくても大人みんなの宝という発想が必要」
「自我が確立する少年期で最も学ぶべきは、他人の傷みを共有できるかどうか。だがその傷みがいや応なくやって来るのが人生。そのことを書きたかった」と。


「少年」に対する表面的な態度や物言いはちがえど、大人たちの温かい心に胸を打たれる、素敵な心休まる作品ばかりです。短篇集ですので、時間のない方には特にお薦めできます。ちょっとした空き時間に一つの作品だけなら読めてしまうほどの短篇です。
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2 件のコメント:

  1. こちらも「これから読みたい本」メモに記載の一書ですね。
    ちょうど、井上陽水の「少年時代」を自分のスタンダードナンバーとして弾いていくとよいなあ。。。と思っていたところ(歌詞的にも今が旬ですね。)だったので、キャッチーな
    感じがしました。
    今日は、6月から参加させていただいている施設さんのお誕生会に単独で参加させていただきました、6,7月は音楽療法士さんのアシスト的に入らせていただいたのですが、今月は、「ひとりで誕生日会にはいってもらっていいですか。」
    とのスタッフさんのお声がけに充分なことはできないかもしれませんが、私のできる範囲で。。。と参加させていただきました。奈良アコさんのT氏からいただいた「初恋によろしく」が役に立ちました。自分なりに引き出しをつくっていったこと、メンバーさんが私のことを覚えていてくださったこと、等初回にしては、不十分なりにベストを尽くさせていただけたように思います。きくまささまにお電話でお話ししていた「くいだおれ太郎」もどきのスモックも好評でした。
    お要りようの方がおありでしたら、時期が重ならなければ、
    お貸し出しも可能ですよ。

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  2. くま女房さんへ

    今回の本は、まさにお薦め!(でも、人によって受け止め方はまちまちなので、ナーンヤ!となったらお許しを)
    いい本に巡り会えると気持ちがいいです。
    お忙しいくま女房さんには、特にお薦めです。
    すぐに読めますので。

    「くいだおれ…」、好評でよかったですね。

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