2011年8月12日金曜日

奇縁まんだら

ずっと以前、このブログに「瀬戸内寂聴のものは、もう読みません」と書きましたが、前言撤回!

瀬戸内寂聴の「奇縁まんだら」(日本経済新聞出版社)を読みました。

チカコが読んだ本なのですが、昨日の散歩のあと、ちょとした時間つぶしにチカコが車に置いていったこの本を手にとり、最後の二人(遠藤周作、水上勉)のエッセイを読んで魅せられてしまい、結局、今日、全ての人物についてのエッセイを読んでしまいました。

このエッセイには次の人物が登場します。島崎藤村・正宗白鳥・川端康成・三島由紀夫・谷崎潤一郎・佐藤春夫・舟橋聖一・丹羽文雄・稲垣足穂・宇野千代・今東光・松本清張・河盛好蔵・里見弴・荒畑寒村・岡本太郎・檀一雄・平林たい子・平野謙・遠藤周作・水上勉の21人。

世間では有名な方ばかりなのですが、恥ずかしながらその存在をまったく知らなかった作家もいます。この本は作家の作品紹介を主眼とした本ではなく、寂聴が今までに出会った作家について、出会いのきっかけやその人物の人間関係、創作の裏側などを寂聴らしいユーモアで描いていて、最後まで飽きることはありませんでした。

花を添えているのが横尾忠則の絵。各作家ごとに3種類の絵が描かれていて、その絵にも味わい深いものがあります。

寂聴は性的描写が得意な人らしく、とりあげた作家の私生活の中から好んで性的なスキャンダルをこの随想集に数多く登場させています(この辺りが「もう読みません」と書いた理由なのですが)。

例えば、平野謙の真面目さを語るために開高健のことが次のように書かれています。

テーブルは開高さんの独壇場で、美女のマダムと二人で盛り上がっている。そのうち、開高さんの話に興奮したマダムが、やおら服の前ボタンを次々外し、ぽろりと豊満なおっぱいをむきだして見せた。=略=「あのう、開高があれからまだ帰ってこないんですよ。いま部屋を覗いたら、帰った気配もありません。大丈夫でしょうか。」

今東光に自身が出家するためにお願いにいき、得度式の日取りが決まってからのこと。

その日訊かれたことは、
「頭はどうする?」
「剃ります」
「下半身はどうする?」
「絶ちます」
それだけであった。

一人の人物に14ページほどの短いエッセイです。歴史に名を残す文豪たちが身近に感じられる楽しい本です。
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2 件のコメント:

  1. 私も平野 謙さんは存じ上げておりません。申し訳ないことです。彼の文章と言い、今東光さんと瀬戸内寂聴さんとの極めて短い、それでいて余計な会話が一切なしの、単純明快な
    やりとりが面白いですね。

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  2. MR.BONさんへ

    寂聴のユーモアあふれる文は、読んでいておもしろいのですが、なぜかシモネタが入ってくるのです。「オキライ」ではないのですが、「オスキ」でもありません。
    でも、これだけ幅広い交友関係を故人となった有名作家と保ってきて、今、それを語れる寂聴は貴重な存在です。続編も出版されているので、図書館で見つけたら読もうと思っています。

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