2011年8月8日月曜日

人生のいちばん美しい場所で

立松和平の「人生のいちばん美しい場所で」(東京書籍)を読みました。

この小説には、二組の夫婦が登場します。主人公である奥井の元「部下」で、早期退職をして奥井の住む大規模開発された団地の一角に夫婦二人が快適に暮らせる規模の家を建てて引っ越ししてきた高山夫妻。悠々自適な生活の始まりとして、退職記念にとアラスカに旅行する計画を妻が立て、先に現地へ出発して夫のために旅行プランを練るのですが、現地で急死し、高山の退職後の生活設計がすべてご破算に…。

奥井は妻がアルツハイマーを発症したことで、高井よりも数年前に意に反してやむなく早期退職。物語の始まりでは、まったく対称的な「早期退職」者の心境が描かれ、高山の妻が急死してからは、もっぱら奥井夫妻のことに焦点が絞られていきます。

高山が亡き妻の薦めで買ったワゴン車を先輩である奥山に提供し、閉じこもるばかりだった奥山がこの車でアルツハイマーの妻と小旅行に出かけることになります。

アルツハイマーの妻が目的地に選んだのは、奥山にとって思い出したくもない土地。妻の法子が学生時代に同棲していた尾形(奥山の先輩)が自殺した場所…これから先はお読み下さい…

老いること、病、退職後の生活、夫婦のあり方…自らと重ねて読める、そして自分のこれからの生活を見つめさせてくれる、純粋に共感できる…すばらしい小説でした。

若い方にも、私と同年代の方にもお薦めできる作品です。
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4 件のコメント:

  1. 立松和平さんは本名の横松をもじってつけたペンネームだそうで、お嬢さんの山中桃子さんは挿絵・イラスト画家とのこと。彼の作品のイラストもよく担当されている由。
     生前の朴訥で独特な語り口には好印象を抱いていました。
    kiku 氏は4月26日にも彼の「下の公園で寝ています」という
    作品を紹介されてますね。
     私は毎日演奏活動で手いっぱいで、本を読む時間がなかなかとれないでいるのですが、いつかそんな時が来たら老眼をしょぼつかせて読んでいることでしょう。
     貴ブログから触発され読んでみたい、と思っている本は
    「アコちゃんのアコーディオン」(久保田昭三 著)と「愛の挨拶」(本岡類 著)です。
     今世紀中には読みたいと思ってオリマス。

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  2. きくまささま。毎回、楽しい書評を拝見するのを楽しみにしています。きくまささまは、アコ関係の様々な実務、ご家族様のこと、もちろん練習、そして初心者の方のお稽古とご多忙なのに、かなりのハイペースで様々な本を読んでおられますね。私は、6から8週に1冊読めれば。。。なペースです。先日。姉にきくまささまのブログを紹介した時に、
    「Sさんと同系色のヒト。」と説明しました。中学、高校とブラスバンドでご一緒したS氏は、中高生の自分に最もよい
    影響をあたえてくれた友人です。(学部は違いますがきくまささまの大学の後輩にもあたります。)中学生の時から、かなりの読書人で、「読書のたのしみ」をおしえてくれたことについては、姉と双璧です。中学の時から、「映画に携わる仕事がしたい。」というのが夢だ、と何度も話してくれました。
    ご実家が牛乳屋さんをされていたので、「ミルクマン斉藤」というペンネームで、「Meets」の映画欄の連載をずいぶん長いこと担当されています。初志貫徹、ですね。
    生命保険の営業をしていたときに、
    「Sさんと、並んでトランペットを吹いていたのですか。。。わあ。。」とフリーライターのお姉さんに言っていただいたことがあります。

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  3. MR.BONさんへ

    本当は、「演奏活動」や「アコ」のことに時間を割きたいのですが、まだまだ思うように弾けず、空いた時間を読書にあてているだけです。昔は小説があまり好きではなく、時間があればオカタイ本を読んでいましたが、今は気軽に読める小説が増えています。

    このブログから「読書」の記事を少なくしたいのが本音です。
    テレビはあまり好きでなく、寝る前にニュース番組を見る程度。アコの練習や演奏に時間を割けるようになりたいです。
    8月21日には、BON先生に苦しめられることになるであろう「山本講座」のことなど、「西アコ」の記事を書くつもりです。
    お手柔らかに…

    「劣等生」No.1候補より

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  4. くま女房さんへ

    「書評」などという大袈裟なものではありません…
    「備忘録」として独り言をメモしているだけ…
    もしかすると、多くの人に不快な思いをさせているかもしれません。でも、出版社の「誇大広告」的な書評よりはマシ、その程度です。

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