伊坂幸太郎は若い人たちにはとても人気があるようで、ネットで検索してみると絶賛の嵐。
理由もうなずけます。ユーモアあふれる表現や洒落た引用があちらこちらに登場し、語り手である「私」は少し変わった人物ながら親近感あふれる若者。登場人物の会話が知的で、設定も巧妙。楽しめる物語ではあります。
内容は、ごく簡単に言うと、「私=泉水」とレイプされた結果生まれた「弟=春」、そして癌に冒されて闘病中の父、この家族の深い絆を描く物語。
…なのですが、結果だけを見ると「落書き」、「連続放火」と「殺人」という重大犯罪に対し、読者にはそれを許せる行為と錯覚させてしまうぐらい、その犯人(読む楽しみを奪うことになりますので詳しくは書けません)や関係者の会話や回想が豊かで楽しいのです。警察の捜査状況など全く登場しないまま。放火された被害者の声はほんの少し出てくるだけ、殺された人物は極悪非道な面しか描かれず…
温かい「家族愛」が前面に押し出され、「重大犯罪」であるという事実がはるか彼方に押しやられているわけですから、読者からすると、犯人たちを責めるよりも「絶賛の嵐」となることも不本意ながらうなずけてしまいます。
重厚感を味わうことはできない本ですが、楽しめる本であることは間違いありません。「罪を憎んで人を憎まず」の見本のような小説?…でもなく…頭が混乱させられ、この文を書く間に「ガリガリ君」を2個も食べてしまいました。ホントは作者にいろいろ注文したい内容もあるのですが、この辺りで終わりにします。
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