2011年7月9日土曜日

誰かがそれを

佐伯一麦の「誰かがそれを」(講談社)を読みました。

「ピロティ」を読んで興味を持った作家です。「誰かがそれを」はケンポナシ、誰かがそれを、俺、むかご、かわたれ、焼き鳥とクラリネット、プラットフォーム、杜鵑(ほととぎす)の峯という8つの短篇が収録されています。

作者によれば「10年ぶりの短編集」。前半の5編は、作者自身の日常から切り取った作品のように感じます。特に表題作の「誰かがそれを」の主人公「かれ」は、元電気工でアスベストの体験記を書いた作家という人物。まさに佐伯一麦自身のこと。おまけに舞台となるマンションは東北。

前半の5篇は、中年作家と染色家の妻、それぞれの語りによる暮らしぶりがたんたんと描かれています。また、「ピロティ」で描かれていたようなマンションの管理人の視点からの話なども。あと数編、同じように作者のマンション生活を扱った短篇を加えて、一冊の「短編集」として世に出して欲しかったなあと思うのは私だけではないと思います。


小説とは関係ないことなのですが、仙台在住の作家だとは知っていましたので、もしかすると震災のことをどこかに執筆しているのではと思い、調べてみました。結果、やはりありました。興味を持たれた方は次のHPをご覧になってみられては…。http://www.yomiuri.co.jp/book/feature/sinsaiki/


どの短篇もたんたんとした日常を温かい眼差しで描いていますので、読んでいてホッとさせられます。安心してお薦めできる「私小説」です。
ブログ村を一度はのぞいてみて下さい
ブログランキング・にほんブログ村へ

2 件のコメント:

  1. 8日に出題した自作のパズルですが、実は答える側は易しくて、出題する側の方が難しいと、いうか工夫がいるのです。
    もしこのブログをご覧になっている方で、おヒマがある方は
    同じ形式のものを作ってみてください。(私は他に2~3考えつきましたが・・・
     さて、今日の佐伯一麦氏の記事を見て、早速彼を紹介して
    いるHPを開いてみました。震災記を見ると生々しいはずの
    内容を淡々と綴っていますね。ついでに広瀬川を愛した自称
    「川男」としての想いの記事も興味を喚起させられました。
    kiku氏のグログから、いろんな人や本、考え方等の出会いが
    あり、うれしい限りです。
    テナわけで今日は寒いギャグは封印しますので足?カラズ。

    返信削除
  2. MR.BONさんへ

    またまた「スパム」扱いになって隔離されていました。
    スパムとは、もともと豚肉の缶詰の商品名でしたが、今では「迷惑メール」のことをさします。BONさんのメールが「ダジャレの缶詰」なのでスパム扱いとなってしまっているのでしょうか…

    いつか機会があれば、私もパズルを作ってみます。
    でも忘れやすいタチなので、そうなれば足カラズ…

    返信削除