2011年6月21日火曜日

てのひらの迷路

石田衣良の「てのひらの迷路」(講談社)を読みました。

あるPR誌に2年間連載された短篇と「小説現代」に載せられた短篇が収録されています。二編をのぞき、原稿用紙10枚分、ページ数にして6ページ半の、まさにショートストーリー(掌編)です。


短編集(作者は『掌篇集』と呼んでいます)ですからどこから読み始めてもよさそうなものですが、ほとんどの短篇は作者の体験をもとにしてつくられ、作者の2年間にわたる書き手としての生活が反映されている作品ですから、ページ順に読むことをお薦めします。「短篇連作集」ではないのですが、それに近い要素を含んでいます。


この短編集のおもしろいところは、それぞれの短篇の前に作者がその作品を書くにいたった思いが「前書き」として書かれているところです。

例えば「無職の空」では、「ファンタジー、ホラーと続いたので、四本目には私小説をもってきた。三十歳間近の陽司の話は、ぼく自身に起きたことと、ほぼ変わりない。ぼくも予期せぬ一日で会社を辞めたことがあるのだ……」という前書きがあり、物語が始まるのです。

また「レイン、レイン、レイン」では、「これはほとんど回想シーンばかりのような一篇。十枚というショートショートのよさは、こうしてまったく構成を考えずにひと筆書きができるところにある……雨が好きなのは、実際ここに書いたとおり……」という前書き。

今まで「短編集」と呼ばれるものを数多く読んできましたが、この作品ほど気軽に読めるものはあまりありません。睡眠導入剤として読まれるもよし、待ち時間に読まれるもよし…。
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4 件のコメント:

  1. kikumasa様、

    カブトガニです、一足違いで残念でした、残念賞をお送りしますのでお名前、ご住所、お好きな音楽のジャンル、ご希望の音源(CD,DVD,VHSなど)
    メールでお知らせ下さい。

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  2. カブトガニさんへ

    お心遣い、ありがとうございます。
    次の機会があれば再チャレンジさせていただきます。
    詳しくは、メールにて…。

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  3. 花の写真や見聞録、読後感想も含めた本の紹介、またアコサークルをはじめ各サークル活動の紹介など、写真もふんだんに入れて、読み手が知らず知らずのうちに引き込まれてしまうブログですね。それを毎日欠かさず、というのがまた凄いというか、余程のヒマジンというか・・・。
     それにしても「一筆書きの感覚で小説を書く」とは羨ましい才能の持ち主ですね、この作家は。
    石田衣良(いしだ・いら)というのは本名が石平(いしだいら)というのを、2分割してペンネームにしたそうですね。
     睡眠導入剤か待ち時間・・・のくだりは作者や書店にとってみれば、こんな有難いブログはないでしょうね。何しろタダで宣伝してもらっているようなものですから。彼らからいくらか宣伝費を出してやってほしい、なんて下世話なことを考えているワタクシメであります。
    一応匿名希望と書いておきますが、賢明なる紳士淑女諸君には既にお見通しのことでございましょう。

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  4. 匿名さんへ

    今日は先生の八尾での取り組みに参加できなくなり、とても残念です。

    私は仰るとおりの「ヒマジン」です。こんなに自由に(ある程度の制約はありますが)時間が使えるのは大人になって初めて。以前の私は、ネットの世界に首を突っ込むのは「調べ物」程度。多くて週に一度ぐらいでした。このブログを毎日更新できなくなる日も近いかもしれませんが…

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