2011年5月7日土曜日

ワルツ

結城信孝編「ワルツ」(祥伝社文庫)を読みました。

この「ワルツ」には田辺聖子、石田衣良、姫野カオルコ、小泉喜美子、連城三紀彦、横森理香、田中小実昌、森奈津子、有吉玉青、吉行淳之介の短篇が収められています。

「解説」によれば、松本清張の小説はほぼ完璧だが、ユーモアの欠如が唯一の欠点だと断言し、「微笑、苦笑、失笑、嘲笑、哄笑、忍び笑い、照れ笑い、薄ら笑い、作り笑い」をさせられるショート・ストーリー集として編集されたようです。

最も印象に残った作品は、有吉玉青の「鍵」。32歳の既婚女性が再会し語り合う数時間を描いた作品。10編の中で最も心温まる作品でした。

その中に、こういう文が出てきます。「記憶の中の学生時代は、なぜかいつもいい天気で、すべてがきらきらと輝き、人がゆっくりと動いている」。この件を読んで、話の展開とはまったく離れ、私自身の「記憶」をたどり始めてしまいました。雨の中での出来事の記憶が、この件と同じく浮かんでこないのです。降ってくるものと言えば雪だけ…。大人になってからの記憶の中にはいくつも雨の場面があるのですが。妙に納得してしまってしばし心は過去の世界へとんでいました。

他の小説は、夜這いの話だったり、別れの儀式としてのデートを扱っていたり、コメディアンのシニカルな笑いだったり、SFものが混じっていたり…、一気に読んだので頭が混乱してしまいました。もし「読んでみよう」と思われるのでしたら、一気読みはやめておかれることをお薦めします。

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