2011年3月7日月曜日

いちげんさん

スイス生まれで、同志社大学文学部を卒業したデビット・ゾペティの「いちげんさん」(集英社文庫)を読みました。

物語は、京都のある大学で国文学を専攻する主人公(世界各地を訪ねた経験のある外国人)と盲目の女性との「恋愛小説」。

作者がスイス出身ながら日本語で書いた、ということもあり、注目された小説です。「日本人」の作家があまり使わないだろうと思われる表現が所々に出現します。

◆川辺でバーベキューを楽しむ以外に意味を持つ営みが何ひとつとしてない日があるのと同じように、読書をしなければその日の存在意義が永久に失われてしまうような日もある。

◆流しの排水孔の周りにはカビがはえていた。ゴキブリが自殺したくなるような炊事場だった。

◆この匂いっていったら、本当にすごいよ。日本中の蠅(ハエ)が一斉に綺麗な南の島へ亡命したくなるような匂いだぜ。

◆太り気味の兎(ウサギ)はやせ我慢を知らない

新鮮な発想や修辞が随所に現れる小説なのですが、日常生活ではあまり意識しない、「ガイジン」の悩み(この小説では京都が舞台です)がテーマとなっています。

特に「いちげんさん、お断り」の京都で、異質な存在であることを意識させられて疎外感を感じる主人公。見た目で決めつけられる経験を重ね、そうした「見た目」とは無縁の盲目の女性に受け入れられ恋に落ちていきます。

最後には、恋人と別れ、そして京都にも別れを告げることになっていくのですが…。
ブログランキング・にほんブログ村へ

0 件のコメント:

コメントを投稿