2011年2月15日火曜日

白紙委任状

イタリアの推理小説作家、カルロ・ルカレッリのデビュー作(1990年)である「白紙委任状」(菅谷誠訳・柏艪舎)を読みました。

訳者によれば、著者カルロ・ルカレッリはジャーナリストでもあり、第二次世界大戦末期のファシズム政権をテーマとする研究者でもあるのですが、そういう「研究者臭さ」がなく、時代背景の描写も簡潔にわかりやすく織り込みながら、話が展開していきます。

時代背景を抜きにすると、「傷心と嫉妬に駆り立てられた、あわれな」娘の犯行という単純な事件をあつかっています。

この事件の解決にさまざまな困難が伴い、それがこの小説の読みどころでもありました。

時代は、「連合軍」がシチリア島に上陸し、ファシスト・ムッソリーニがドイツ軍に助けられて北イタリアに新たなファシスト政権国家を樹立していたころ。ナチス親衛隊、ファシスト党、警察、政府機関、パルチザン…、いろんな組織、人物が入り交じり、主人公である捜査官・デルーカ自身が命を狙われながらも最後には犯人にたどりつきます。

最後まで任務を果たそうとするデルーカがそれをあきらめ、連合軍やパルチザンから逃れて次作へ続く「シリーズ」第1作ともなっています。わずか162ページですぐに読める本ですが、内容には薄っぺらさはありませんでした。
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