2011年2月2日水曜日

夢は枯れ野をかけめぐる

西澤保彦の「夢は枯れ野をかけめぐる」(中公文庫)を読みました。

主に認知症などに代表される「老人介護」を扱いながら、玄米を主食、野菜や漬物や乾物などを副食とすることを基本とする「マクロビオティック」、親子関係や夫婦関係の葛藤を秘めた「家族問題」、そして「恋愛」など、さまざまなテーマを扱う短編連作集です。

「迷いゴミ」「戻る黄昏」「その日、最後に見た顔は」「幸福の外側」「卒業」と、老人介護、恋愛、家族、食文化をテーマに、主人公である羽村祐太に関わるさまざまな人間関係が描かれていきます。

最後の短編「夢は枯れ野をかけめぐる」で思いもよらぬ展開が待っていました…。まさに、作者の勝ち!!です。



佐智子が語る中に次のような言葉がありました。「祖母から電話がかかってくる。曰く、あたしの財布と通帳が見当たらない、あんたさっき盗っていったでしょ、と、自分の娘を泥棒呼ばわり」

これを読んで、私の祖母のことを思い出してしまいました。90歳で亡くなる直前まで元気に歩けるひとでした。ただ、佐智子が語っているのと同じようなことが頻繁にありました。通帳を隠しては、隠し場所を忘れ、その繰り返し。元気でしたので、自分で新しい通帳を何度も作りにいっていたようです。私の母を泥棒呼ばわり。おまけに近所にふれまわり…。母の苦労が、今は、あの頃以上に分かります。

「生きる」こと、「介護」すること、されること、いろんなことを考えさせられた小説です。
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