2011年1月28日金曜日

片眼の猿

一昨日、京橋で「吉田親家77コンサート」の実行委員会があったときに、またまた、時間つぶしのため本屋へ行きました。まだ読んでいない図書館で借りた本があるので、買うつもりもなく立ち寄ったのですが。

目にとまったのが、17日に発表された「第144回直木賞」受賞作、道尾秀介の「月と蟹」。単行本なので(値段が高い)、パス。他のコーナーを見ていると、またまた道尾秀介の「片眼の猿」(新潮文庫)が目にとまってしまい、結局(安いから?)、購入。

道尾秀介のものはたった1冊、2007年の「本格ミステリ大賞」受賞作、「シャドゥ」を読んだことがあるだけでした。

「片眼の猿」は、「シャドゥ」に比べてとても読みやすく、違う作者が書いたような感覚で前半を読んでいました。

主人公の三梨は、盗聴を専門とする探偵。ある楽器メーカーの依頼で、ライバル社を調査中、悪徳探偵社に勤める冬絵をスカウトし、調査の最中に殺人事件が発生…。トリックの伏線が作品中にちりばめられ、後半部分は驚きの連続。

しかし、ただ作者の巧妙なトリックがちりばめられた、ストーリーを楽しむだけの作品ではありません。表題とされた「片眼の猿」について、作中にこう紹介されています「昔、999匹の猿の国があった。その国の猿たちは、すべて片眼だった。=略=たった1匹だけ、両眼の猿が産まれた。その猿は、国中の仲間にあざけられ、笑われた。思い悩んだ末、とうとうその猿は自分の右眼をつぶし、ほかの猿たちと同化した」。「『俺はこう思うんだ。猿がつぶしたのは、そいつの自尊心だったんじゃないかって』」。

この作品に登場する人物の多くが、身体や精神にハンディキャップを持っています。主人公の三梨は耳殻を事故で失い、隣に住む双子の小学生には片腕がなく、「爺さん」には鼻がなく…。

人としてどう生きるか、人をどう見るか、それらを読者に問いかける作品だとも言えます。
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