2011年1月11日火曜日

音楽の根源にあるもの

「わらべうた」から「芸術音楽」まで、世界中の伝統音楽から現代音楽までを研究対象にし、いわゆる「民族(民俗)音楽」の研究者としての草分け的存在だった小泉文夫の「音楽の根源にあるもの」(平凡社)を読みました。


彼は1983年、56歳の若さでその生涯を終えています。この本は1977年に発行された単行本のライブラリー版です。
小泉文夫の8つのエッセーと2つの講演、3つの対談が収められています。これらは、1963年から1977年までの15年間に発表されたもので、世界各地を実際に渡り歩き、分析・理論研究をした最初の音楽学者だと言われていることが納得できる著書でした。


興味をひいたのは、「わらべうた」や「民謡」の時代超越性を解説した部分。「(1)わらべうたは固定した形で伝承されず、民謡一般と同様に、常に作りかえられて、生きつづける。(2)新しい環境の中から次々と新作が生まれていくが、その作曲技法は極めて保守的で、江戸時代の技法と本質的に変わっていない。…」などを、昭和36年に東京の小学生を対象に調査した結果から導き出していきます。


また、カリブー・エスキモーは二人いっしょに歌うことができないが、クジラ・エスキモーはリズム感がよく、集団での斉唱も同じエスキモーとは思えないぐらいうまいことなどを例にあげながら、歌謡の起こりを解説したりしてくれています。

蛇足ですが、彼が実際に収録した音や取材インタビューなどがネット上で公開されています。

小泉文夫記念資料室の中に所蔵音響資料があります。ここに967件ものインタビューや「音」がWeb試聴可能なものとして収録されています。ぜひ、訪問されることをお薦めします。

また、本を読む気はないがネットで世界の音楽を知りたいと思われるならおんがく世界めぐりコーカイ記」をお薦めします。
ブログランキング・にほんブログ村へ

0 件のコメント:

コメントを投稿